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居ながらにして異文化体験     

コロナが5類に移行して以来、金沢を訪れる観光客も一気に増えました。

夏休みに入り、連日記録的な猛暑が続く中でも、そぞろ歩く人波絶えない東山界隈。

町屋塾のお茶体験も大賑わいです。

茶屋街の喧騒から少し外れた卯辰山の麓。

路地裏にひっそり佇む伝統的の町家の茶室で、相席なし、一組ずつのお茶席。

丁寧に客の作法から茶室のしつらえ、歴史伝統についてもお教えします。

さらに希望があれば、町屋塾所蔵の着物を着ての体験もできます。

…ときたら、それはもう海外からのお客様にとっては和文化をまるごとぎっちり詰め込んだ、たいへんお得で魅力的なアクティビティーであることは間違いありません。

そんなわけで町屋塾の茶の湯体験、最近では世界中からちょっとマニアックな日本ファンが情報を探り当ててたどり着く、隠れた人気スポットになりつつあるとか。

体験のお客様がたくさんいらっしゃる時には、私も着付けやお点前、半東などのお手伝いをします。

世界中から観光客が押し寄せる古都金沢で、居ながらにして世界各国様々な文化圏の人々と交流。なんて贅沢なことでしょう

訪れる人々が様々なら、その文化も生活様式も、考え方も様々。

当然、興味の持ちようも人それぞれです。

とても寡黙な中東からのお客様は、日本の建築様式に興味を持っていて、町屋の柱や茶室のしつらえひとつを熱心に観察し、深く哲学的な質問を投げかけてきました(双方ともに外国語の英語で、専門外の説明をするのは本当に苦労しました)

底抜けに明るいメキシコの女性は、茶室での秩序だった亭主と客のやりとりや立ち居振る舞いの意味が理解できず

「そんなこと気にしないで大丈夫よ!」

と、笑い飛ばしながら、それでもお茶を美味しそうに味わって帰られました。

親子連れの団体を率いる中国人ガイドさんは、茶の湯の作法を自らの儒教的文化に寄せて解釈して、「子供たちにお点前をさせて、それを日頃の感謝をこめて親にふるまう」という趣向にしたいとリクエストしてきました。

かとおもうと、着物姿もビシッと決まり、背筋をしゃんと伸ばし初めてだとは思えない美しい所作で驚かされる海外のお客様も時々見かけます(そういう方はたいてい空手や柔道等、武道経験者だったりします)

さまざまな文化圏、国、地域、民族から人々がこの小さな茶室にやってきます。

お客様は、はるばるやってきてお茶体験。

私たちは、居ながらにして異文化体験。

ここを訪れる人はそれぞれ、興味の赴くままにいろんなことを聞いてきます。

そんな中で、誰もが共通して口にする質問、何だと思いますか?

それは、

「どのくらい修行すれば、あなたのようなティーマスターになれるのですか?」

という、吉村先生への問いかけなのです。

どんな質問にも経験に裏打ちされた的確な答えを返す深い知識はもとより、所作一つひとつからにじみ出る茶人の風格を、異文化圏の人たちも感じ取るのではないかと、お茶を運びながら私はちょっとドヤ顔しているのです。

うちの先生、すごいでしょーって。

                            文:中北久美子  






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